食育だより

16 2018.6

川上さんの料理教室 第1回目(シーズン2)


 子育てをするお母さんを中心に第二期、川上万利子さんの料理教室《各月1回の全6回コース(8月はお休み)》の第一回目が6月16日(土)芸術学園幼稚園にてスタートしました。第一回目は料理教室の概論についてのお話があり、参加者一人一人が「参加した理由、料理教室を終えた後の期待、日々の食生活の疑問や悩み等」を確認しました。(写真は試食の玄米ごはん、黒ゴマ塩、出汁を使わないお味噌汁)


川上ご夫妻プロフィール


 高知市鏡川橋からほど近い場所で「マクロビオティック食堂 静かな喫茶店」をご夫婦で営み、おいしい玄米と地元でとれた安全な野菜と穀物を使って、体にやさしいマクロビオティック料理を提供しています。マクロビオティック創始者 桜沢如一の直弟子の松岡四郎氏から直接指導を受け、料理屋をはじめ料理教室や健康相談、食事指導、講演等を行ない活躍中。旦那さんの伸二氏は勉強熱心、探求好きで少年のような無邪気さがあり、奥様の万利子氏は何事にも動じない鋼鉄の軸があると同時に鋭い洞察力と直観力から相手の心を温かく包み込む優しさがあります。二人とも素敵な笑顔が特徴です。


参加者の参加理由(料理教室で期待する事など)



・昨年、料理教室に申し込んだが参加できず、今回はなんとしても参加したかった。
・息子が芸術学園幼稚園でお世話なっていて、もともと体が弱かったのですが、給食の玄米食で目に見える変化(元気になっていく姿)に「玄米食」への興味がわいたため。
・食が病気を防ぐことは分かっているが、なかなか一人では難しく、健康になるヒントが得られるのではないかと思って参加した。
・今まで何も気にせず食べてきて子どもが生まれ、ご飯を食べさす時に「私が食べてきたことを、子どもにも同じようにして子どもは元気になるのかな?」という疑問が生まれたため。
・若い時にマクロビオティックを少し勉強し、「アレはダメ、これはダメ」と続けられなかった。その後、他の勉強もしたが「本当にアレコレとダメなのか」という疑問があったので、もう一度知りたいと思い参加。
・「体は食べ物で出来ている」と考えた時に、「どのような物(食事)を口にすればいいのか」という思いが強くこみあげてきて、一から学び、深く知りたいと思ったため。
・マクロビオティックの食事や健康食が美味しいと思ったことがなく、ジャンクフードに慣れてしまっている自分がいるが、どうしていいか分からず、勉強すれば食べていけるようになるのではと思い参加した。
・娘が芸術学園幼稚園にお世話になっていて、娘は風邪をひかないが、自分は風邪をひいたり、体調を崩すことが多く、娘のように元気な体質を「食」を勉強して体質改善をしたい。
・体質改善(減量、疲れやすい、低体温など)が目的で参加した。


本日の内容
「子育てとの関連を中心にして、玄米食とは?食べ方と食材の選び方」


 現在、健康に関する情報が世の中に溢れ、「○○健康法」「○○はしてはいけない、食べてはいけない」といったフレーズは当たり前にあり、健康を趣旨とした「○○セミナー」「○○講演会」なども多く、何かあればパソコンのボタン1つで調べる事ができ、非常に便利である一方で世の中を冷静に見た時に医学は進歩し、食の多様性があり、栄養学も昔より発展している中で、医療費は膨らみ、2人に1人は癌になるという現実に矛盾を感じている人も多いのではないでしょうか。たくさんの情報が私たちの心の目を曇らせているように感じます。概論では以下1~4の軸が料理教室で大切な事とし、「健康になるための方向性とは何か」を参加者に伝えられました。



1、 土地の物・季節の物
土地の物とは自分が住んでいる地域の物。(自分が住んでいる場所に近ければ近いほど良い)
季節の物とは歴史を振り返ると夏の物を冬に食べたり、冬の物を夏に食べたり出来るようになったのは約2000年の内ここ数十年。
→体が食べる物を記憶しているため、長い歴史で続けてきた食生活のリズム(土地の物・季節の物)が崩れる(季節の物ではない物を食べる)と体がビックリ(何かしら症状としてあらわれる)する。

2、 主食と副食の割合(穀物主義、歯の割合)
食べ物の入り口は間切れもなく「口」です。そして、口だけでは体内に大切な栄養は取り入れられません。しっかりとよく噛むことで体内へとエネルギーが取り入れられます。その噛む役割に重要な「歯」を見れば、人間がこれまでにどのような種類の食べ物を食べてきたかということが分かります。歯の割合は5(穀物・臼歯):2(野菜・門歯):1(お肉、魚・犬歯)となっています。私たちは生きている期間の変化しか知らないと思うが、それ以前にも歴史はあり、昔は今みたいに病気になる人は少なかった。

3、 陰陽の調和をはかる(食材を選ぶ、調理の時、食べ合わせ)
陰陽とは拡がる力(膨張力)と縮む力(収縮性)。陰と陽の二つで一つ。「好き」と「嫌い」で一つ。人間関係も同じで好きな人や気が合う人もいれば、苦手な人もいる。いっけん、苦手な人はどうしようもなく思ってしまうこともあるが、苦手に反応している自分を教えてくれている存在であり、反応しているということは自分も同じ事をしていたりしているわけで、相手を見て自分自身を見ているということである。そのため食べる物でいうと、例えば人参の上部分が好きで下部分が嫌いだからといって上部分だけ食べるのは人参を食べている事にはならず、不完全食である。上部分、下部分、皮、根、葉の全てで人参。どれか一つでもかけるといくら肥料やたくさんのお水をあげても、人参として実らない。
このような視点で食材選び、調理の仕方、食べあわせを考えることで「良い加減」へと落ち着くということにつながる。

4、 噛む(唾液の働き)
上記1.2.3の内容とは異なり、1番重要なポイント。今までの内容は「どこで何がとれるか、何をどのように選ぶか」で外から生きる力を得るということであったが「噛む」こと(唾液の働き)は自分の体(自らの力)のこと。「噛む」というのはただ単に食べた物を細かくし消化しやすくするためだけではなく、噛むこととで出る「唾液」と「食べた物」の化学反応により生まれる物が生命力に繋がっている事である。また、唾液は「一人ひとりの処方箋」と言われ、自己治癒力のかたまりでもある。「よく噛んで食べる」ということには、このような深い内容がある。

5、 その他 玄米の炊き方、お塩について(化学塩と自然塩)、出汁なし味噌汁の作り方


本日の参加者の感想


・「健康な食事」とは、もっとストイックにしなければならないと思っていたが、正確な情報を知ることで簡単な事だと感じ、ホッとした。また、マクロビ食もハードルが高く感じていたが本物(塩について)を知らなかっただけだと思いました。
・牛乳、卵、砂糖など日頃から使っていて、少しずつ情報を得るうちに「これで良いのかな?」と疑問があった中で本日の川上さんのお話は大きなキッカケになりそうです。私も子どもも大きな声で怒ったり、泣いたりする事がよくあるので、食生活の改善をすることで生活が整うのではないかと感じました。そのために、何がどう良いのかを勉強し、実践できるように進めてみます。
・いろんなお話がありましたが、今出来る事は味噌と塩を見直すことだと思いました。今まで何も考えず、一番安い物を買っていたのでそこから改善しようと思います。
・「正しい食事」とは何かを、これからもしっかり学び、自分の生活に活かして、体調の変化もじっくり見て行きたいと思います。また、今まで食のことで学んだ事をもう一度再確認させていただきました。
・家族の「食」を変える!!となると壁が高いと思っていましたが、家族に無理強いしない事を教えていただき、とても気持ちが楽になりました。まずは自分のできることを少しずつ広げて、気がついたら家族も変わっているというような流れにしていければと思います。
・農薬や添加物にとても敏感に反応していましたが、「唾液」についてお話を聞き唾液の働きを知って驚きと安心で不安が和らぎました。まずは私が実践し、子ども達にも伝えて行きたいです。
・とても奥深いお話が聞けたとともに捉え方を変えれば体は健康へ近づけさせる事が出来るのだなと感じることが出来ました。
・今まで本を読んだりして情報を得ていましたが、実際にお話を聞けてとても分かりやすかったです。いかにいろんな情報に惑わされていたかが分かりました。一気に全てをするのは難しいので、まずは玄米ご飯と黒ごま塩を始めてみたいと思います。
・日頃、朝食・昼食と時間に追わ、喉に詰まりながら食事をとっていましたが、今後はしっかりと唾液が分泌される環境を整えることから、始めたいと思います。
・試食の玄米ご飯を100回数えて噛んでみて、日頃からいかに噛む回数が少ないかを認識しました。子どもが生まれてから急いで食べる事が多くなっていました。これからは「噛む」ことを実践し、いつかその効果を周りの人にも話ができたらいいなと思いました。


最後に



 川上万利子さん話の途中で参加者の「?」を感じては毎回、「私の話したことを信用してはダメですよ。本当?と思ったら家に帰って試してください」と言いました。また、『話を聞いて「良い話が聞けた。来月も聞きにこよう」というのでは何も変わらない。だけど、聞いたことの中で一つでも出来そうな事をやることで、それだけのものがかえってくる』ともお話されました。さらに、最後にこのように締めくくり、参加者の「出来るかな?」「続くかな?」「やらなきゃいけないな!!」という不安や緊張を取り払いました。『本日伝えた4つの事を「実践しなくちゃいけない」「ちゃんとやらなくちゃいけない」「地元の食材探しに行かなきゃ」というような「~しないといけない」や「あれダメ、これダメ」ということではなく、出来ない時もあるし、家族との関係もあるので、このような事が基本で【健康になるための方向性】を正確に知っていることが大事。その中で「本当かな?」と思うことを出来る時に出来る範囲で行ない、変化を体験する事により徐々に自分のものになる。だから、焦らず、他人に無理強いせず、方向性を忘れずに』と。このメッセージを参加者がどうのように受け止められたのかは、全6回の料理教室を終えたときに、変化として見られることが楽しみです。
次回は7月14日(土)「腸内細菌…本当の意味の健康とは何か、食べ物が肉体や精神に及ぼす影響、糠床の作り方」についてです。梅雨時で湿度が高く、夏に向けて気温も高くなってきます。水分の取りすぎには気をつけたいですね。